一番の違いは、英語を使う目的がはっきりとしていて、特殊な単語、表現を使ったりするという点です。例えば、医療英語では普段の会話ではめったに使わない単語を使うことがあります。場合によっては、一般の英和辞書では載っていないので、医学用語辞典で探さなければいけないこともあるかもしれません。
English for Specific Purposesという言葉を耳にしたことはあるでしょうか。「ある特定の目的で使う英語」という意味なのですが、日常会話で使う一般英語ではなく、特別な目的のために使う英語になります。医療英語もまさにEnglish for Specific Purposesです。医療従事者がどのような任務を達成する必要があるのか、どういった流れの中で英語を使う必要があるのかを熟知した上でカリキュラムが構成され、学びが導かれなければなりません。
病院内で使われる医療英語と限定すれば、対話者は主に外国人患者さんとなります。患者さんからの状況説明、症状の聞き取り、その他の背景情報などを適切に聞き取り、正確に理解する高いリスニング力が医療スタッフには求められます。
また、検査、診察の流れ、処置・治療法、処方箋、次回の診察の予約など、様々な診察ポイントで行われる医療スタッフからの説明も、簡潔でかつ正確に英語で伝えられるスピーキング能力も求められます。
患者さんが仮に英語のネイティブスピーカーだったとしても、英語での専門用語はもしかしたら知らないかもしれません。一般の人が分かる言葉に置き換える必要も出て来る場合もあるのです。一般用語と専門用語の語彙を理解した上で状況に合わせて使い分けながら、患者に説明できることが求められます。
実際には多様な背景(国籍、年齢、職業など)をお持ちの外国人の方が来院されるかもしれません。当然、共通言語として使われる言語がたまたま英語であっても、それは多種多様な英語になる可能性が高いのです。決して英語教材で使われているお手本的なきれいな英語ではありません。アメリカ英語、イギリス英語、中国語訛りの英語、アラビック系なまりの英語、インドなまりの英語、フィリピン英語、ロシアなまりの英語など、それぞれ特徴、独特のクセがあります。そのような音としての聞き取りのポイントなども知識として知っておくと、いざというときの対応力に差が出てきます。
曖昧さが残らない誠実なコミュニケーションを図ることで、来院される外国人患者さんの不安は軽減され、患者さんとの信頼も築くことができます。「信頼の構築」はリスク管理上大切なことです。
臨床の場での患者さんとのコミュニケーション能力は一番大切かもしれませんが、医療英語にはそれ以外のニーズも含まれます。例えば、臨床医の場合、最新の医学知識や症例報告を英語の学術論文から読み取り、理解する力も求められるかもしれません。あるいは、国際学会で英語による症例報告発表したいと思っている先生もいらっしゃるでしょう。さらにその上を目指して、国際学術誌に英語論文を掲載することを目指している方もいるかもしれません。また、勉強熱心な医療従事者の中には、定期的に勉強会を開き、気になる最新の英語学術論文を仲間と読んで意見交換し、自己練磨をされている方々もいらっしゃいます。その他、近年は海外から医療スタッフが研修のため訪問し、一定期間、病院で研修を積むということも増えてきています。このように英語が単なる「英会話」という枠を超えて、今まで以上に必要とされる時代に入りました。
このような力を「英会話以外の英語力」を身につけるには、英語論文を読み取る力、理解して得た知識を今度はアウトプットとして英語で発信する練習を重ねる必要があります。その第一歩は、「質の高い良い論文」とはどういうものかを見極める目を養うことです。「良質の英語論文」とはどのように書かれたものなのかを体系的に学ぶことで論文の理解力、そして英語での発信力も強まります。実際にいろいろなタイプ、レベルの論文を一緒に読んで解説を受けることで短期間のうちに習得することが可能なスキルです。英語による学会発表の原稿執筆、スライドの作成、プレゼンテーションの仕方、質疑応答の準備なども応用が可能です。
このように医療英語を「英会話」という一つのカテゴリーにのみ押し込めることなく、総合的に医療の知識、スキルも磨く良いきっかけとして英語を学ばれることをおすすめします。当社もクライアント様から寄せられる様々なニーズに対応できるよう、日々精進して参ります。